「子供に会社の株を渡したい」「友人に譲るにはどうすれば?」——そんな声をよく耳にします。株式譲渡と一口に言っても、方法によって税金も手続きも大きく異なります。この記事では、家族や友人間での株式譲渡に絞り、贈与・売買・相続の3つのルートを実務手順と税務リスクの両面から比較。初めての方でも迷わないために、実際の流れと注意点を整理しました。
譲渡所得税率:20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%) ·
確定申告義務発生ライン:年間20万円超 ·
非公開株式の手続き目安:1~3ヶ月 ·
贈与税基礎控除(暦年課税):年間110万円
クイックスナップ
- 譲渡所得税率は一律20.315%(国税庁タックスアンサー No.1463)
- 年間110万円以下の贈与は贈与税非課税(暦年課税)(国税庁タックスアンサー No.4408)
- 非公開株式の譲渡には会社の承認が必要な場合がある(M&Aキャピタルパートナーズ)
- 非公開株式の時価評価方法は個別事情により異なり、税務署との協議が必要なケースがある(山田&パートナーズの研究レポート)
- 無償譲渡と認められるかどうかの判断基準(時価と実際の対価の差額の割合)には明確な閾値がない(M&Aキャピタルパートナーズ)
- 非公開株式の譲渡手続きは通常1~3ヶ月(Proceo「家族へ株式譲渡するには?」)
- 相続税申告期限は被相続人死亡から10か月以内(政府広報オンライン)
- 2024年改正で相続時精算課税制度が拡充、家族間の株式承継の選択肢が広がる(M&Aキャピタルパートナーズ)
- 法人版事業承継税制の対象株式数上限撤廃により、中小企業の自社株承継が容易に(中小企業庁)
株式を譲渡するとどうなる?
株式譲渡の基本的な仕組み
- 株式譲渡とは、株主が保有する株式を他者に移転する行為です。譲渡の対価があるかどうかで課税の種類が分かれます。有償(売買)なら国税庁の所得税課税情報によれば譲渡所得として申告分離課税、無償(贈与)なら贈与税の対象となります。
- 非公開会社では、定款により取締役会や株主総会の承認が必要とされるケースが多く、家族間であっても会社法上の手続きを経る必要があります(M&Aキャピタルパートナーズの解説)。
譲渡に伴う税金の種類
- 譲渡所得税:株式を有償で譲渡した場合の利益(譲渡益)に対して20.315%の税率がかかります(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)。年間20万円を超える譲渡益があると確定申告が必要です(国税庁タックスアンサー No.1463)。
- 贈与税:無償で株式を譲渡した場合、受贈者に課税。年間110万円の基礎控除後の金額に10~55%の累進税率が適用されます(国税庁タックスアンサー No.4408)。
手続きの大まかな流れ
- 株価(評価額)の決定 — 非公開株式の場合は類似業種比準方式や純資産価額方式を用いる(税理士法人チェスターの解説)。
- 株式譲渡契約書の作成 — 譲渡株数、価額、支払条件、承認条項を明記。
- 対価の支払い(または贈与の場合はなし)。
- 会社の承認(必要に応じて取締役会決議)。
- 株主名簿の名義書き換え(Proceo「家族へ株式譲渡するには?」)。
株を無料で譲渡できますか?
無償譲渡(贈与)の法的な可否
無償での株式譲渡は贈与契約として有効です。ただし、対価がないため贈与税の課税対象になります。年間110万円までの基礎控除があっても、それを超える贈与には累進税率がかかります(国税庁タックスアンサー No.4408)。
無償譲渡とみなされる条件
- 時価よりも著しく低い価格での譲渡は、差額が「経済的利益」とみなされ、受け取った側に贈与税が課される可能性があります(いわゆる「みなし贈与」)。M&Aキャピタルパートナーズの分析では、このリスクを軽視すると急な追徴課税につながると指摘されています。
- 無償譲渡と認められるかどうかの判断基準には明確な閾値がなく、個別の事実関係に基づく税務署の判断を仰ぐ必要があります(山田&パートナーズの研究レポート)。
有償譲渡との課税の違い
- 有償(売買)の場合:譲渡者に譲渡所得税が課される。受け手には贈与税はかからず、取得価額は支払った対価となる。
- 無償(贈与)の場合:受贈者に贈与税が課される。譲渡者に所得税はかからない(M&Aキャピタルパートナーズの比較解説)。
「無料で譲る」という選択肢は一見魅力的ですが、贈与税の負担やみなし贈与リスクを考慮すると、適正な時価で売買した方が将来の税務リスクを抑えられるケースが多いと専門家は指摘します。
株式を子供に譲渡するにはどうすればいいですか?
贈与による方法とその手続き
- 贈与契約書を作成し、譲渡する株式の種類・数量・日付を明記。公正証書にしなくても有効だが、税務調査の証拠として重要です(Proceoの実務解説)。
- 暦年課税(年間110万円控除)を利用して、毎年少しずつ贈与する「少額分割贈与」が相続税対策としてよく行われます(M&A DXの解説)。
- 相続時精算課税制度を選択すれば、贈与時は非課税(または猶予)となり、相続時にまとめて精算。2024年改正で対象範囲が拡充されました(M&Aキャピタルパートナーズの改正概要)。
売買による方法と注意点
- 親子間でも売買は可能。譲渡者に譲渡所得税がかかる一方、子供には贈与税がかからず、取得価額が支払額になるため将来売却時の課税が抑えられます。
- ただし、著しく低い価格での売買はみなし贈与とみなされるリスクがあるため、山田&パートナーズの研究は「時価に近い価格での取引が安全」としています。
相続による承継との比較
相続の場合は被相続人の死亡により株式が移転し、相続税が課されます。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)の範囲内であれば無税です(政府広報オンライン)。贈与と比べて一度に大きな株式を移せる反面、遺言書や遺産分割協議が必要で、タイミングを自分で選べないという制約があります。
友人に株を譲渡したいのですが、どうすればいいですか?
売買契約の基本ステップ
- 株価の合意 — 上場株式なら市場価格、非公開株式なら評価方法に基づいて双方で協議。
- 株式譲渡契約書の作成 — 譲渡株数、価額、支払方法、実行日、会社の承認条件を明記。税務調査で取引実態を証明する重要な書類になります(Proceoの契約書解説)。
- 会社の承認 — 非公開会社の場合、取締役会または株主総会の承認が必要なケースがほとんど(M&Aキャピタルパートナーズの手続き説明)。
- 対価の支払いと株主名簿の名義変更。
税金申告の留意点
譲渡益が発生した場合、譲渡者は確定申告が必要です。年間20万円超の譲渡益があると申告義務が生じます(国税庁タックスアンサー No.1463)。非公開株式と上場株式は別々に計算する申告分離課税です。
友人間の譲渡では「安く買ってあげよう」という親切心が仇になりやすい。時価より低い価格だと、差額が贈与とみなされ受贈者に課税されるケースがある。
株譲渡のデメリットは?
譲渡益に対する課税負担
譲渡所得税は一律20.315%と高率で、特に含み益の大きい株式を売却すると税負担が重くなります。さらに、非公開株式の評価方法によっては課税額が予想以上に膨らむリスクもあります(国税庁の申告分離課税解説)。
手続きの煩雑さとコスト
- 株式の評価額の算定には専門知識が必要で、税理士や弁護士への依頼費用がかかる(北陸税理士会の計算解説)。
- 会社の承認手続きや株主名簿の書き換えなど、社内作業も発生する。
経営権喪失のリスク(特に非公開株式)
株式を第三者に譲渡すると、議決権が分散し経営支配権が変動する可能性があります。家族間であっても、持株比率の変化が後々の意思決定に影響を及ぼします。同族会社の場合、株主間の持株比率の変化が税務上の論点になることもあります(NGS税理士法人の指摘)。
3つの譲渡ルート、ひとつの違いは「課税の発生位置」です。表にまとめました。
| 項目 | 有償譲渡(売買) | 無償譲渡(贈与) | 相続による承継 |
|---|---|---|---|
| 課税の種類 | 譲渡所得税(譲渡者) | 贈与税(受贈者) | 相続税(相続人) |
| 税率/控除 | 20.315%(申告分離) | 10~55%(課税価格から110万円控除) | 相続税の基礎控除あり(3,000万円+600万円×法定相続人数) |
| 取得価額(受取側) | 支払った対価 | 時価(原則) | 相続税評価額 |
| 手続きの要否 | 会社承認が必要な場合あり | 会社承認が必要な場合あり、贈与契約書必須 | 遺言書又は遺産分割協議が前提 |
メリット
- 後継者に議決権を集中できる(M&Aキャピタルパートナーズの分析)
- 事業承継の円滑化につながる
- 相続発生前に争族を回避できる
- 売買なら譲渡者に譲渡所得税がかかるが、受け手に贈与税がかからない
デメリット
- 贈与税・相続税・譲渡所得税の税負担が大きい
- 評価額を誤るとみなし贈与リスクが発生(山田&パートナーズの研究)
- 株主構成の変更で経営権が不安定になる可能性
- 手続きや評価に専門家費用がかかる
家族間・友人間で株式を譲渡するための実務ステップ
- 株式の評価額を確定する — 非公開株式の場合は類似業種比準方式または純資産価額方式を採用。必要なら税理士に依頼(税理士法人チェスターの評価方法解説)。
- 譲渡方法を選択する — 有償(売買)か無償(贈与)かを決める。贈与の場合は相続時精算課税の活用も検討。
- 契約書を作成する — 株式譲渡契約書(売買)または贈与契約書を作成。譲渡株数、価額、支払条件、実行日を明記(Proceoの契約書ガイド)。
- 会社の承認を得る — 非公開会社の場合、取締役会または株主総会の承認が必要。定款を確認する(M&Aキャピタルパートナーズの手続き解説)。
- 対価の支払いと名義変更 — 売買の場合は支払いを確認後、株主名簿を書き換える。
- 税務申告を行う — 譲渡所得税の確定申告(年間20万円超の場合)または贈与税の申告(年間110万円超の場合)を忘れずに。
確認済みの事実と不明な点
確認済みの事実
- 譲渡所得税率は一律20.315%(2025年時点)(国税庁タックスアンサー No.1463)
- 年間110万円以下の贈与は贈与税非課税(暦年課税)(国税庁タックスアンサー No.4408)
- 上場株式の譲渡益は申告分離課税の対象(国税庁同解説)
- 非公開株式の譲渡には会社の承認が必要な場合がある(M&Aキャピタルパートナーズ)
不明な点
- 非公開株式の時価評価方法は個別事情により異なり、税務署との協議が必要なケースがある(山田&パートナーズの研究)
- 無償譲渡と認められるかどうかの判断基準(時価と実際の対価の差額の割合)には明確な閾値がない(M&Aキャピタルパートナーズ)
専門家の見解
「株式等を譲渡した場合、その譲渡益は申告分離課税の対象となり、税率は20.315%です。上場株式等と一般株式等(非上場株式等)は別々に計算する必要があります。」
— 国税庁タックスアンサー No.1463「株式等を譲渡したときの課税」(出典)
「家族・親族に株式を譲渡する際、著しく低い価格で売買すると、時価との差額が経済的利益とみなされ、受け取った側に贈与税が課されるリスクがあります。評価額を慎重に決めないと、知らないうちにみなし贈与となるケースがあります。」
— M&A仲介会社専門家(M&Aキャピタルパートナーズの解説)(出典)
「非上場株式の相続税評価は、類似業種比準方式と純資産価額方式の2つが基本です。一般に純資産方式の方が評価額が高くなる傾向があり、含み益の大きい会社ほど差が出ます。」
— アタックス税理士法人「非上場株式の相続税評価はこう決まる」(出典)
株式譲渡を家族や友人に対して行う際、選択肢は「相続」「贈与」「売買」の3つ。どれを選ぶかで税負担と手続きの複雑さが大きく変わります。間違った方法を選ぶと、みなし贈与による追徴課税や、経営権の混乱を招くリスクがあります。家族間での株式移転を検討しているなら、まずは非公開株式の評価額を確定し、税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。日本の事業承継を円滑に進めるためには、法人版事業承継税制の活用も視野に入れ、早めの計画が鍵になります。
よくある質問
家族間の贈与はなぜバレるのでしょうか?
税務署は株主名簿の変更や会社への調査を通じて株式異動を把握します。また、高額な贈与には贈与税の申告が必要で、無申告が発覚すると追徴課税や延滞税が加算されます。年間110万円を超える贈与は、たとえ家族間でも申告義務があります。
無償の株式譲渡とは?
無償譲渡とは、対価を受け取らずに株式を他者に移転することです。法律上有効ですが、贈与税の課税対象となります。ただし年間110万円の基礎控除があります。
株を無償で譲渡するにはどうすればいいですか?
贈与契約書を作成し、株式の種類・数量・日付を明記して相手に渡します。非公開会社の場合は会社の承認が必要なケースがあります。税務上は時価評価が必要です。
株式譲渡の手続きの流れは?
①評価額の決定→②契約書作成→③対価の支払い(または贈与)→④会社の承認→⑤株主名簿書き換え、という流れが一般的です(Proceo)。
株式譲渡と贈与の違いは?
株式譲渡は有償(売買)か無償(贈与)かの総称。贈与は無償の移転のみを指します。課税は譲渡の場合譲渡所得税、贈与の場合贈与税と異なります。
株式譲渡にかかる税金の計算方法は?
有償の場合:譲渡価額−取得費−手数料=譲渡益、これに20.315%を乗じます。無償の場合:時価−110万円(基礎控除)の金額に贈与税の累進税率を適用します。
株式譲渡契約書の作成方法は?
譲渡人・譲受人の氏名、株式の種類・数量、譲渡価額、支払条件、譲渡実行日、会社の承認条項を明記します。公正証書にする必要はありませんが、証拠として重要です(Proceoのテンプレート解説)。

